タイトル未定















オレはホグワーツ家当主の使い魔、プライドだ。
さて、まずは今オレが置かれている状況について説明しよう。

「プライド、お願い!」

少し早い夕食時の大広間、グリフィンドールのテーブル、山盛りのデザートの前。
オレはチェイサーの三人娘、双子のパチル姉妹やラベンダーなど、あらゆる女子達に囲まれている。
ハーマイオニーがオレの背を叩いた。

「ほら、プライド! 何でもいいから何か食べて!」

事の発端は、クィディッチチームの女の子達。
オレがケーキでもコーヒーでも、何でもぺろりと平らげる雑食性なのだと知ったのだという。
そして彼女達は何故か、そう何故か、猫がケーキを食べている姿を見たいと考えたらしい。
オレは使い魔だ。
ならば、主君に許可を取る必要があるのではないか。
しかし我が主エリックは、慣れない相手には少し冷たいところがある。
果たして、こんな小さなお願いを聞いてくれるのだろうか。
そう考えた彼女達は、エリックと親しいハーマイオニーに頼み込むことにしたそうだ。
ハーマイオニーから事情を聞いたエリックは、何の躊躇いもなく二つ返事で了承した。
かくして拉致られたオレは、上は七年生から下は一年生まで、女子という女子に囲まれている。

「はぁ……」

こうも見られてたら食いづらいっつーの。
食べたいんだけどな……まるで待てをされている犬みたいじゃねぇか。

「プーラーイードー!」
「食べてってば!」
「ケーキ食べるペットなんて滅多に見られないのよ!?」
「待て! オレはペットじゃねぇ!」

聞き捨てならん!

「いいか! オレはペットじゃなくて使い魔だ!」
「でも、エリックはペットみたいなもんだと思って、って言ってたけど」

エリックー!!
とんでもない裏切りに、虚空へ虚しく叫ぶ。
皆はオレの声を聞いて大笑いした。
笑うところじゃないんだよ!
そもそもエリックは何でオレをこんな所に放り込んだのだろう。
いや、普段は男子連中と共に行動することが多いハーマイオニーが、女子と関わる数少ない機会だ。
彼女の顔を立てたのだろうということはまあ分かる。
しかし、使い魔たるもの、常に側に居なければ意味が無いだろうが。
まぁ、行こうと思えば姿現わし出来るんだけどな。
でもほら、非常時でも無いし、ハリーとロンも側に居るだろう。
……使い魔だけど、女の子に囲まれて嫌な気はしないし?
オ、オレだって男だからな!

「ねぇ、プライド」
「お願いっ」

パチル姉妹が、キラキラ輝く目でオレを覗き込んだ。
まずい、まずいぞ。
多分本人は気付いていないが、パーバティはエリックのひそかな想い人だ。
彼女もエリックに気があるようで……まずい、これは非常にまずい。
どうするよオレ。
――例えばオレがここでそっぽを向いたとしよう。
それでもしも、もしもだ。
彼女の機嫌を損ねるようなことになったら……。
パーバティはそんな子じゃないとオレは信じているが、でも、万が一ってこともある……かもしれない。

「もう、プライドったら……拗ねちゃった?」

ハーマイオニーの微妙な気遣い。
暗にさっさと食べろと言われているような気がしないこともない。
もうやけくそだ。

「あー分かった分かった、食えばいいんだろ? 食えば!」

オレはそう言って、先程から目を付けていたタルトに手を伸ばした。
すかさず近くの女子が皿に取ってくれる。
オレが口を開けると、彼女達はぐっと顔を近付けた。
た、食べづらい……!

「うわー、凄い光景……」

女子の壁の向こうから、ロンの声がした。
オレの耳がピンと立ち、皆もオレが動きを止めたのに合わせてぴたりと止まる。

「あんなに女の子が集まってるの、ぼく初めて見たよ」

ハリーの呆然とした呟き。

「圧巻だな」

とは我が主。
……我が、ある……じ?

「エリックー!!」
「きゃああああ」

オレは叫ぶと、驚いた女の子達の悲鳴も無視して、エリックの元へ跳んだ。
彼は危なげなくオレを捕まえ、にこりと笑った。

「さっきぶり、プライド」
「さっきぶり、じゃねぇ! 何のつもりだ!」

しかもオレのことペット……ペットだなんて!

「いやぁ、たまには女の子に囲まれてみたいかなって」

確かにちょっと嬉しかったけど!
ハリーが横で笑った。

「プライドが下級生に怖がられてるって、エリック心配してたんだよ」

……は?
オレが口を開けっ放しにしていると、今度はロンが肩を竦めた。

「だってキミ、名前通りにプライド高いし、口悪いし。見た目は普通に猫なのに」

だから良い機会だろうって。
ロンはそう言って、な? とエリックに同意を求めた。
オレは口を開けたままエリックを見上げた。
いや、遠巻きにされてるのはお前だろうに。
そんな言葉がふわりふわりと頭の中でふわりふわりと浮いている。
奴は……違う違う、エリックは、笑ってオレの鼻をつついた。

「プライドー」
「早く食べてー」

女の子達が不満そうにオレを呼ぶ。
エリックがオレを持ち上げる。

「ほら、呼んでるぞ」

だからって。

「放り投げるやつがあるかー!!」

宙で見たのは、一昨日オレと目が合って泣きかけた一年生の女の子の、楽しそうな笑顔。
オレはテーブルに着地し、エリックをちょっとだけ振り返った。

「ま、いっか」

ペットと紹介したことは、この際水に流してやろう。
……タルト美味そうだし。









 back


150826