燔祭の羊  
   <ハンサイノヒツジ>  









61.同い年の強み









「あれっ」

任務から帰り、リンクを引っ張って真っ先に食堂へ行く。
すると珍しいことに、近頃は一箇所でしか見ることの出来なかった姿を見つけた。
リナリーの前に座る、黄金。

「兄さーん! リナリー!」

リナリーが振り返り、がひょこっと顔を覗かせた。

「アレンくん!」
「お帰り、お疲れ様」
「ただいま!」

アレンは笑って言葉を返し、リナリーの横に座った。
失礼します、とリンクがの隣の椅子を引く。

「具合はもう良いんですか?」

無愛想に聞いたリンクへ、が顔も向けずに「まぁな」と返した。
若干の緊張を孕む空気。
が溜め息をつきつつ、リンクへ微笑む。

「……サンキュ」

場を執り成そうと、アレンは笑った。

「それなら、もっと早く帰ってくれば良かったなぁ」

ふふ、とリナリーが肩を竦めた。

「焦って余計な怪我しないでね」
「やだな、しないですよ」
「さっき途中の階段で躓いていた人の台詞ですか」

ケーキ作りの本を開いたリンクが、しれっと呟く。
アレンは慌てて突っ込んだ。

「うわっ、何バラしちゃってるんですかリンク!」

リナリーは笑い出し、は苦笑する。
その時、遠くから声が聞こえた。

「いたいた! !」

横を向くと、手を振るラビ。
なにやら袋を振り回しながらこちらへ歩いてくる。

「ああ、ラビ。何? 風呂?」
「そーそー。久しぶりに一緒にどうさ? お湯掛け大会の五十回目、まだ勝負がついてねぇじゃん?」

が吹き出した。

「ははっ、そーだったな。今あそこ無人?」
「もちろん! 偵察済みさ!」

ラビの拳に、が拳をぶつけた。

「乗った!」

彼はこちらへ向き直る。

「悪い、俺行ってくる」
「うん」

リナリーが柔らかく笑みを返す。
は立ち上がって、食堂の端へ声を掛けた。

「ユウー!」

お茶を飲んでいたらしい神田がキッと振り返る。

「風呂行こうぜ!」
「勝手に行け」
「なんだ、枕投げの方が良かったのか」
「そういう問題じゃねぇ!」

楽しそうに、が笑った。

「来ないならお前、不戦敗な」
「何っ!?」

慌ただしく神田が立ち上がり、食器を片付け出した。
が傍らまで来たラビへ笑い掛ける。

「着替え取ってくる」
「オレも着いてくさ。ユウー! 風呂場で待ってっからなぁー!」
「ファーストネームで呼ぶなっつってんだろッ!」

神田の雷をものともしない二人は、悠々と食堂を出ていった。
遅れて神田も荒々しく出ていく。
嵐のように三人が去った後、食堂のあちこちに微笑みが広がっていた。

「ホント、仲良いわよね」

リナリーの笑顔に、アレンは頬を掻いて笑った。

「ですね」

矢継ぎ早の会話。
僕らが入る隙間なんて、どこにもない。









(本編78話以降)
160401