燔祭の羊  
   <ハンサイノヒツジ>  















パパの目が、わたしを見ていなかった。
上を向いているから、わたしも上を見た。



大きな重い音が、聞こえた。
え、どうして?
この機械、何かな?
ティムキャンピーも機械だけれど、あの子はもっとかわいかった。
これ、何だろう。
パパは、……パパはどこ?



機械がわたしを見た。
どうしよう、怖いよ。
お兄ちゃんを呼ぼうとしたら、機械が筒みたいな手を持ち上げた。
怖い、怖いよ。
口からわけの分からない声が出ていく。
そして、



ドン、と



音が聞こえて、気がついたらわたしの体の真ん中が、失くなっていた。
痛いよ、こわいよ、たすけて。

!? 父さ――」

お兄ちゃんの声がする。

「……おに、ぃ、ちゃ……」

これでも、一生懸命なの。
いっしょうけんめい、手を、のばしているの。
なのに、お兄ちゃんのあたたかいあの手に、とどかない。
なみだが出てきた。
まえが、みえないよ。

「――え、」

お兄ちゃん、どうしてわたしの手、くろくなっちゃったの?
お兄ちゃんと、ずっと同じ色だったのに。



お兄ちゃん。
お兄ちゃん。
お兄ちゃん。



お兄ちゃんは、穴もあいてないし、手もしろいまま。
もう、だれにも、そっくりねって、いってもらえない。



お兄ちゃん。
お兄ちゃん。



それでもまだ、こんなを、「いもうと」って、いってくれる?



お兄ちゃん、

「……たすけて……」

おにいちゃ









わたしはずっと、あなたのいもうとで、ありたいの








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